さて、天文航法と地文航法を主に使う、私の「GMTからJSTへ グリニッジ=明石間 子午線の旅」は今回、シベリアから馬力を掛けて国内に戻り、一挙にゴールを迎えました。
バイカル湖からモンゴルのウランバートルに出て、次は北京で給油するはずが、手違いで長時間離席している間に、飛行機は東シナ海まで進んでしまいまして…「えーいっ、このままノンストップで福岡まで行ってしまえ!」となって、あっさりと帰国。岡山県の岡南空港で、スタート時にロンドンのグリニッジ子午線(経度ゼロの線)を越えたのと同じ、スタンプSV4複葉機に乗り換え、ゴールラインに決めた日本標準時子午線(東経135度)の真上に建つ、明石市立天文科学館前を通過し、ほぼ赤道3分の1周に当たる長さの旅を終えました。この天文科学館は今回、新たに3Dオブジェクトを作ったのですが、苦心の末、ちゃんと時計台の針が動くようにプログラムできて、私としては大満足です。スタンプSV4で母港の伊丹RJOOに帰着後� �もう一度岡南飛行場から同じ区間を、ピラタスPC-9M改でも飛び直しました。
モンゴルの金持ちは、ドイツでベンツを買うと自宅まで運転して帰るそうで、「遊牧民にとって、1万キロのドライブは全然苦にならない」のだとか。私も今回、ピラタス社のあるスイスから伊丹のhide格納庫まで、PC-9M改をフェリー(機体空輸)したことになり、ちょっぴり遊牧民的な気分になりました。ちなみに、離陸地点となったロンドン南部・ビギンヒル空港から、着陸地・伊丹RJOOまでの全航程は6956nmで、使用機の内訳はスタンプSV4複葉機が計520nm、ピラタスPC7改が435nm、新たに常用機に採用したピラタスPC-9M改が6018nm。ドイツの「二つの秘密基地」のお話の際に、レヒリンからペーネミュンデまで試乗したピラタスPC-21が63nmでした。一部区間が重複す� ��ため、機種別合計は全航程と一致しません。
では、最終回のコースをご紹介します。
(Elevは空港の標高、Magは磁気方位、MagVarは磁気偏差、Trueは真方位、記載無しも真方位)
◎ムキノ空港UIUU(バイカル湖東岸奥)RWY08(True078)/26(ILS110.30) Elev1680ft
▼186.2度239.3nm
◎チンギスハーン国際空港ZMUB Elev4364ft MagVar004W RWY-14(True136deg ILS110.30)/32
▼137.7度630.2nm
◎北京空港ZBAA MagVar006W RWY-18L(True173 ILS109.30)/36R(ILS109.90)
▼125.6度276.5nm
◎威海空港ZSYT VOR112.50 ←ムキノから約1146nm
▼132.9度342.9nm
◎済州国際空港RKPC VOR109.00 Rwy06/24(True058 ILS109.90/238 111.30)MagVar006W
▼85度165.7nm
◎壱岐空港RJDB VOR113.20 NDB355
▼98度30.7nm(Mag105度)
★福岡VORTAC-DME 114.50 (RWY True150-ILS111.70)MagVar006W
▼Mag77度34nm
★新北九州空港VORDME 113.85 (RWY True169-ILS109.15)
▼Mag83度55nm
★玖珂VORTAC 114.30
▼Mag87度98nm
★高松VORTAC-DME 117.50
▼Mag002度16nm
◎岡南空港RJBK RWY-09/27
▼Mag90度53nm
△明石市天文科学館・日本標準時子午線
▼Mag107度13nm
◎神戸空港RJBE
▼Mag56度14nm
◎大阪国際空港RJOO
1625nm
●●朝青龍関のふるさとへ:
バイカル湖の東岸から、山一つ越えた地方都市、ウラン・ウデ(赤いウデ川)のムキノ空港で、飛行を再開します。
この街は人口38万人で、ブリヤート共和国の首都だそうです。例によって、初めて知る国名・地名でしたが、北京へ伸びるシベリア鉄道支線の基点であり、ミル・ヘリコプターの大工場がある航空産業都市だとか。ロシアはもともと人口密度が希薄ですが、スターリンの時代に国防上の理由から、工場をどんどんウラル山脈周辺と、もっと東のシベリアに疎開して、飛んでもない縦深性(地理的奥深さ)を持った工業国家になりました。ナチス・ドイツはご存じのように、モスクワ以東も爆撃できる4発の「ウラル爆撃機」開発を試みましたが、途中で放棄しており、旧ソ連の工業疎開政策は大成功だったと言えそうです。
さて、そのムキノ空港で0053時(現地0653時)に起動したら、オレンジ色の朝焼けが見事でした。305度の風8.8 Ktと順風です。モンゴルの首都、ウランバートルのチンギスハーン国際空港までは約240nmしかないので、燃料は軽めに1500Lbsもあれば十分。航法ワークシートは、すでに伊丹まで出来ています。
0058時エンジン始動、0100時離陸。間もなく高度24000ftで定針。地平のすぐ上に太陽が見えますが、雲は比較的多く、5000ftにscatterd、12000ftにbrokenでした。気速は222KIAS(312KTAS)で、46分後にはウランバートルに着く予定です。セレンガ川を右に見るコースですが、この雲では視認できません。かわりに前方に昼間の星が見え、航海フリーウェア「Navigator Lite」に現在時刻と推測位置を入力して調べてみると、お馴染みの恒星、アークトゥルスだと分かりました。
太陽との方位は、60度くらいの深い交角を持つので、必要な場合にそれぞれの高度角を計れば、かなり高精度で緯度経度が出そうです。言わばお守りを、天球に飾っている気分ですね。